大西麻貴+百田有希×KIKI ワタリウム対話実験観察第三夜

建築になっていてもいなくても気持ちいい場所といい建築を接続する。
そのヒントが何となく気になる建築にあるのではないか。それが名建築だろうが、無名の平屋だろうが。
ということで、今回のテーマは「放っておけない建築」
【KIKIのプレゼン】
私の気になるもの(建築)をマイペースに紹介していく内容。
よく建築を見て回るツアーをする中で有名建築を見て回る事から次第に方向性が変わっていったそうです。
KIKIさんは新しい現代建築よりも使用感のある人の形跡がある建築に興味があるそうで、
例として出たのが五島列島の教会群、その流れから日本各地の教会、パリの住宅風景、美術館などに話は進みます。
最初のうちは脈絡なく説明があるようでよく分からなかったのですが、だんだん分かってきた事をまとめると、
まず教会が落ち着く場所だという事。
空間として落ち着く場所が教会だそうで、国内外問わず、日本では北は北海道から南は沖縄まで、無名の教会から東京カテドラルまで様々な教会を訪れています。
紹介された教会空間を言葉で説明する事はとても難しいのですが、強いていうなら光と人を包むようなスケールが共通項でしょうか。うーん、ベタベタな感想。
次に人が作った経過のある建築が好きだという事。
五島列島の教会はガイドブックに紹介されるような美麗な教会もありますが、セロハンをガラスに貼ってステンドグラスの代用にしたり、手作り感あふれるフレスコ画で装飾されたような教会もあるそうで、でも等しく人々の信仰の場であり、人に使われた歴史が積み重なっている建築です。
その多くは神父など無名の設計者達によって建てられ、いわば建築の専門家が建てたわけではない。けれども魅力的な建築というわけです。
建築家に表現できない魅力ある空間。
その多くは人が使ってきたという記憶であるようです。
かといって、建築家が時間の経過を新築状態の建築にのっける事も野暮。
後にモデレータの藤原さんから再び問題提起される今回の大きなトピックだと思います。
あと面白かった話が、最近気になる建築はハマっている登山にリンクして山小屋だそうです。
最小部材で最大空間を如何に立ち上げるか。そしてあり得ない異常条件設定。
極めてる例が雪崩が通る事を前提とした設計。
これって毎回壊れるということなのか。それとも雪崩に耐えうる強度を持った設計という事なのか。
冬季も使うのか、使わないのか。一つの条件で色々考えられる。
コンペとかしたら面白そうですよね。
日◯◯業設計競技『雪崩の山小屋』みたいな。
あと吉阪隆生はたくさん山小屋作っているそうです。
登山家としても名を馳せているらしいですね。知らなかった…。
【大西麻貴+百田有希のプレゼン】
いつものテーマ「においのある建築」と今回のテーマ「放っておけない建築」を絡めて作品紹介。
大西さんの関心事は雰囲気やにおいの美の基準の不変さ。
視覚的な美の基準は変わってもそれは変わらないのではないかという切り口。
確かに寺社とか視覚的美も勿論だけど雰囲気の美はある気がします。
海底から見つかったギリシャ天文台とかあれも視覚的美しさよりも雰囲気な気がする。
百田さんの関心事は抽象的なものと具体的なものとのバランス上に存在するもの。
例えば石切り場。石を切り出す場という具体的目的のある場でありながら石を切り出した残りの穴という何の意味も持たない抽象的空間。抽象と具象の狭間の話は色んなところで聞くけれど、このたとえは面白い。
二人の言う「においのある建築」とは
・敷地との特別な関係性
・質感を伴った形(特にカーブ)
・抽象と具象
大雑把に言うと均衡と雰囲気がテーマだと思いました。
本当に言葉にしにくいことばかり。
現美で作品を見た後だったので、作品紹介も楽しめました。
名前忘れましたがグルグル住宅はギャラリーのような家という要望から始まった住宅だそうで、諸室も寝室、リビングではなく展示室、エントランスと言った美術館のような名称、機能で考えたそうです。
そこを居住者の選択で住みこなすという施主のセンスがかっこいいです。
住宅としての目的がない住宅。
初めから目的を消失しているのに住宅。そこにキッチン、トイレ、フロなど住宅に必要な機能が食い込む。
機能を設計の支えにしたくないという二人がどのように折り合いを付けるのか。気になります。
二組のプレゼンが終わって藤原さんを加えてのトークに。
面白かったのが好きな都市という話からの展開。
結局みんな自分の育った土地が好きだというところにはまっていきます。
大西さんは京都の寺社。百田さんは鴨川沿いの散歩道。KIKIさんは東京の緑ある空間。藤原さんは横浜の港がある風景。
逆に当然の事ですが、馴染みのない都市には誤解が生まれる。特に対東京。
大西さんはどこに行くにもお金がかかる。藤原さんは海が遠い。と。
アイデンティティたる土地を持たない僕としてはこの辺はとてもフラットにみれて面白かった。
京都、横浜、東京いずれも生活した事のある土地。
お互いの良さも分かる。東京批判の原因も何となく分かる。
冗談まじりの話題でしたが、土地性はこの対話シリーズで共通して上がる話題で興味深いです。
この日は来場者がとても多く、しかも建築以外のジャンルの方が多かったようです。熱気がすごい。
対話実験は良好な様子。